トイレもバスルームもない築33年の雑居ビルの2フロアをフルリフォーム

一見すると、まるで新築かのように思えるきれいなこの部屋。実は……

部屋の壁紙は剥がれ落ち、キッチンもバスルームも何もない、いわるゆ普通の雑居ビルの一室のような状態でした。リフォームに要した期間はおよそ4ヶ月。
この状態から、一体どのようにしてここまで蘇らせたのでしょうか。そこで今回は、こちらの物件のリフォームを担当した、インテリアコーディネーターの多積文乃(たづみ・ふみの)さんにお話を聞いてみたいと思います。

<話を聞いた人>

多積文乃(たづみ・ふみの)さん

インテリアコーディネーター。依頼主の部屋のインテリアコーディネートを担当。店舗、宿泊施設、個人住宅のコーディネートを多数手がけている。

ちなみに、今回お邪魔した部屋の間取りはこんな感じ。4階(下部)が居住スペース、ひとまわり小さめの5階が事務所になっています。

3~4階の階段に壁を作って玄関に

階段に壁を作る

多積さん:3階から4階にかけての階段には、分厚い板とセメントを流し込んで玄関にしました。家の中と外を隔てる仕切りができるので、オンとオフの切り替えができるようになるんです。

ーーなかったところに壁を作ったというわけなんですね。

多積さん:階段と同じ色合いの靴箱を置けば、革靴やスニーカーはそこに収納できるので、来客のときも玄関まわりをスッキリ見せられます。

多積さん:依頼主から、4階は居住スペースにしたいとの要望をいただいていたので、清潔感がありつつリラックスできるようにホワイトと木目調の家具で統一しました。

和紙のような壁紙

ーーこの壁紙、触ると表面が和紙のようにザラザラした質感ですね。

多積さん:それも依頼主のこだわりでね。ごく一般的な白い壁紙だと、清潔感はあるけれど、どこかチープな印象になってしまうんです。味気ないから変えましょうということで、高級感のある和紙のような素材の壁紙にしました。

取り外せない壁の傾斜は間接照明にして空間を有効活用

壁の傾斜と間接照明

ーーこういう壁の傾斜があると、私の場合は引越し先の候補の対象から外してしまうんです。家電や家具を置くことができなかったり、空間を有効活用できない気がして。

多積さん:確かにそういうデメリットもありますね。こういう壁の傾斜は、建物の構造や配線の関係上、どうしても壊すことができないので。それにこの部分は、鉄鋼素材でできているので、壁紙を貼り付けるのは非常に大変でした。

壁紙を貼る前の状態

▼壁紙を貼る前の状態。丸みの部分には筒状のダンボールを、平らな箇所には板材を貼り付けて、壁紙が剥がれないようにしました。

多積さん:そのまま壁紙を貼ると、湿気や時間の経過とともに粘着が弱くなって剥がれやすくなってしまうんです。だから、職人さんに相談して鉄鋼部分には筒状のダンボールを一枚噛ませて、その上から壁紙を貼ってもらいました。ここだけむき出しだと、せっかくの落ち着いた部屋の雰囲気も台無しになってしまいますから。

ーーそういう対処の仕方もあるんですね。

インテリアと同じ色合いのタイル

多積さん:ただ壁紙を貼るだけだと物足りないので、インテリアと同じ色合いのエコカラットというタイルを貼って、その裏に間接照明をはめ込んであるんです。こうすれば、一見無駄だと思える箇所も、部屋のフォーカルポイントとして有効活用できます。

部屋の明かりを調整

▼部屋の入り口横にあるボタンを押せば、部屋全体の明かりを調整できるようになっている。

天井の色を切り替える

▼読書をしたりテレビを観たりする昼間は、天井部分を昼白色に切り替えることができる。

ーーおしゃれ!!明るさ調整がつまみじゃなくて、ボタンになっているんですね。

明るさを調整するメモリー

多積さん:これは明るさを記憶するメモリーが内蔵されているんです。だから、毎回毎回明るさを微調整する必要がないんですよ。明るくしたり暗くしたりするときは、5段階まで明るさを調整できます。

黒レースのカーテン

ーー白レースはよく見かけますが、黒レースのカーテンって珍しくないですか?先ほどからずっと気になっていました。

多積さん:そうですね。この黒レースのカーテンは、透け感と高級感の両方を兼ね備えているので、模様替えをするときなど、部屋のアクセントとして取り入れてもいいかもしれないですね。

ボロボロで物置状態のウォークインクローゼット

物置状態のウォークインクローゼット

多積さん:物置きになっていたのを、広さもちょうど良かったのでフローリングにしてウォークインクローゼットにしました。

上部の収納スペース

ーー上にある収納スペースも新たに取り付けたんですか?

多積さん:はい。カバンや小物などが置けるよう上部にも、収納スペースを作りました。依頼主は身長180㎝くらいあって背が高いので、背伸びしなくても使いたいときにサッと取り出せます。

それと、仕事柄、スーツを着る機会が多いと聞いていたので、シルバーのポールをネジで取り付けて、ハンガーにかけられるようにしました。

トイレとバスルームを新たに設置

トイレとバスルーム

ーーこちらの物件は、もとはバスルームもトイレも何もなかったん1Rの部屋ですよね。

多積さん:そうでなんです。バスルームとトイレがないとさすがに生活に困るので、キッチンの隣にバスルーム・洗面所・トイレを作ったんですよ。

バスルームを作る工程

▼バスルームを作っている工程。バスルーム・洗面所・トイレを、右側にキッチンを増設。

水と電気を引いた洗面台

▼洗濯機や洗面台などを取り付けるために新たに水と電気を引いた。

間接照明のあるバスルーム

▼洗面台の正面にあるバスルーム。リビングと同様に、間接照明で自由に明るさを調整できる。

多積さん:依頼主はお風呂が好きだという話だったので、リラックスできるよう落ち着いた色合いのダークトーンで統一しました。

バスピローのついた浴槽

ーーテレビだけじゃなくてバスピローも付いてる……! 首とか頭が浴槽の縁に当たっても痛くならなそう。

多積さん:お風呂にのんびり浸かりたいからと伺ったので、バスピローも設置しました。いいですよね、水に強い素材でできていて、クッションのように柔らかくなっているから、足を伸ばしてそのまま寝転んでも全然痛くないですし。ゆったり湯船に浸かりながら、テレビを観たり、読書をしたり、自分がリラックスできる時間って大切ですから。私の自宅にもほしいくらい。

ーー完成されたこの状態だけを見ると雑居ビルの一室だったなんて想像できません。

広々とした使いやすいシステムキッチン

最新モデルのシステムキッチン

▼バスルームの隣にあるシステムキッチン。料理好きの家主は、キッチンへのこだわりが強く、使用しているのはすべて大手メーカーの最新モデル。オーブンや魚焼きのグリルが一体になっているので、キッチンまわりが物で溢れかえったり、ごちゃついたりすることもない。

多積さん:先ほどの間接照明の部分と同じく、右側に壁の傾斜があるので、ぴったりとハマるようにすべてオーダーメイドで発注しました。ゼロからデザインする新築と違ってリフォームの場合は、箱が決まっている状態からのスタートなので、壁の凹凸や幅、長さをきちんと確認しておくことが大切なんです。

外から見えない水切り

▼洗った食器を置いておく水切りは、外から見えない収納タイプ。

多積さん:洗った食器が視界に入ると、ただそれだけで生活感が出てしまいます。なので、水切りが外から見えないこういう収納タイプがオススメです。

4階フロアをひと通り見て回り、次は仕事場として使っているという5階のオフィスを見せていただくことに。

<5階オフィス>

コンパクトなオフィス

▼5階のオフィスは、4階の居住スペースよりも一回りほど小さくコンパクトな作り。

白と紺を基調としたスタイリッシュな仕事スペース

白と紺が基調の仕事スペース

4階に比べて、壁紙の色や素材もかなり違いますね。

多積さん:5階は、白とグレーがかったストライプ柄の壁紙をアクセントにしています。壁の傾斜もその雰囲気に合わせて、シンプルな空間にしました。

ーー家具がダークトーンでまとめられていて、自然と仕事モードに切り替えられそうです。私も壁紙を変えたら仕事が捗りますか?

多積さん:どうでしょう……(笑)。でも、部屋の雰囲気は壁紙ひとつでガラリと変えられるので、剥がせるタイプの壁紙を貼って試してみるのもいいかもしれないですね。

荷物や書類整理に必要な収納スペースを階段上に増設

階段上に増設した収納スペース

▼デスクのすぐ横には、書類や届いた荷物を保管しておくために、階段の上にスペースを増設。

多積さん:この収納スペースの奥(縦長の窓の奥)は、壁をぶち抜いて新しくスペースを作ったんですよ。取引先との打ち合わせなど来客が多いと聞いたので、見られたくない段ボールや備品も収納できます。デスクの横にあると、必要なときに必要なものを出し入れするのも楽ですし。

2色カラーのブラインド

ーー先ほどから気になっていたのですが、ブラインドのカラーが2色で切り替えられるようになっているんですか?

多積さん:よく気づきましたね。このブラインド、上がシルバーのレース、下がネイビーの厚手の2色構造になっているんですよ。昼間はシルバーのレースで自然光を取り入れ、夜になったらはネイビーで外からの視線を遮り、落ち着いた雰囲気に……という感じで、昼と夜とで全く違った雰囲気を楽しめます。

ーーブラインドの機能も進化してるんですね。私も自宅で仕事をすることが多いので、気分をうまく切り替えられそう。それにしても、何もない場所に壁を作って玄関にしたり、バスルームを増設したり、相当な金額がかかっているのでは……。

多積さん:具体的な金額は言えませんが、国内の高級車が何台か買える金額はかかっているかと思います。水回りを設置すると、やはりリフォーム費用は高くなってしまうんです。

ーーでも、ビフォアの写真と比べると、とてもトイレもバスルームもない普通の雑居ビルだったとは思えません! ここまで快適に暮らせる、おしゃれな空間にリフォームできるんですね。

多積さん:今回の場合は水回りを新たに作ったので、時間もかかりましたが、内窓を付けたり、壁紙を変えたりという小規模なものでしたら、数万円前後でリフォームできますよ。それと、今は安くておしゃれな壁紙、インテリアもたくさんありますから。一度ご相談いただければ、予算や好みなども含めご希望に沿う形でご提案させていただきます。

家主に聞いた!雑居ビルをなぜ一棟丸ごとリフォームしたの?

物件家主のお話

最後に、今回お邪魔した物件の家主であるG.Aさんにお話を聞いてみたいと思います。(プライバシーの関係上、イニシャルで対応させていただきました)

ーー今日はお邪魔させていただき、ありがとうございました。雑居ビルを一棟丸ごと購入されたということですが、リフォームした理由を教えてください。

G.Aさん:自分がゆっくり休める家が欲しかったんです。東京と大阪の2拠点生活をしているのですが、東京に来る度にビジネスホテルに泊まっていたら、ちっとも気が休まらない。だから、事務所の近くにビルを買って、自分好みの部屋にリフォームしようと思ったんです。

ーーリフォームすることを前提でビルを購入されたんですね。リフォームするにあたって、「ここだけは絶対に直したい」と思った部分はどこでしょうか?

G.Aさん:トイレとバスルームでしょうか。もともとはオフィスとして使われていた、古い物件なので、室内にトイレがなかったんです。トイレに行くときは、部屋の外まで行かないとならない。これでは、とてもじゃないけど生活できないし、仕事にも集中できないじゃないですか。

ーー確かに……。トイレの度に、部屋の外に出なければならないのはストレスに感じますね。

G.Aさん:そうでしょう? だから、どれだけお金がかかっても良いから、絶対にトイレは室内につけたかった。あとはバスルーム。僕はお風呂が好きで、どんなに忙しくても朝と夜の2回必ずお風呂に入るようにしています。夜仕事から疲れて帰ってきて、温かい湯船に浸かってボーッとしながらテレビを観る。この時間があると、「また明日も頑張ろう」って思えるんですよ。

ーー湯船に浸かると疲れも取れますね。もともとバスルームもトイレも何もない場所に増設するとなると、配管工事も必要になるうえに、費用も高額になりませんか?

G.Aさん:バスルーム、洗濯機、洗面台は配管工事が必要だったので、費用はそれなりにはかかりました……。でも、バスルームもトイレも何もない状態では、さすがに生活に支障がありますから。

ーー完成した部屋の様子を見る限り、元が雑居ビルの一室だったとは思えません。家具や家電類がブラウン系でまとめられていて、とても落ち着く癒しの空間ですよね。

G.Aさん:癒しといえば、間接照明もこだわりました。宝石を扱う仕事をしているから、日中は蛍光灯の眩しい光で目が疲れてしまうんです。

だから多積さんには、蛍光灯は絶対に避けたい、という希望を最初に伝えました。そうしたら、「明るさも色合いも両方調整できる、メモリー内蔵の間接照明はどうか」って提案してくれたんです。それも、ワンタッチで操作できるボタン式のもの。つまみを回して明るさを調整する煩わしさがないから、すごく便利なんです。

ーー4階は、壁の傾斜部分に間接照明が設置されていますよね。壁を取り壊す、もしくは家具や家電を置いて隠す、という選択肢はなかったんですか?

G.Aさん:ありませんでした。むしろ、この物件をはじめて見たとき「めちゃくちゃおしゃれ!」って思ったくらい。だから、「壁の傾斜を生かしたデザインにしてほしい」とだけ伝えて、4階と5階それぞれ、柱を生かしつつ雰囲気の違うテイストにしてもらったんです。

ーー4階と5階それぞれでデザインが違うのは、G.Aさんたっての希望だったんですね。リフォームしてからの住みやすさ、暮らしやすさはいかがですか?

G.Aさん:最高ですね?! ずっと東京にいたいくらい(笑)。ここまで満足のいくリフォームができたのは、インテリアコーディネーターの多積さんのおかげです。僕がどれだけわがままなお願いをしても、絶対に「NO」と言わない。

それどころか、普通なら絶対に無理だろうと思うこともたくさんサポートしてくれました。何度もショールームに同行してくれたり、工務店の方に掛け合ってくれたり。だから、僕が今こうして毎日楽しく快適な生活ができるのは、多積さんのおかげなんです。素敵なインテリアコーディネーターと出会えるかどうかも、リフォームを成功させる秘訣だと思います。

古い物件でも新築さながらにリフォームできる

満足のいくリフォームを実現

「果たしておしゃれにリフォームできるのだろうか?」と思える古い物件でも、新築と同じレベルにリフォームすることは可能です。部屋のイメージに合うインテリアを選びに行ったり、見積もりをとったり、壁紙の色を決めたりと、大変なことは山ほどあります。しかし、手間ひまをかけた分、愛着も湧き、適度なオシャレ感を盛り込んだ、満足のいくリフォームを実現できるのではないでしょうか。

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